『天空の城ラピュタ』の”シータのシチュー”とは
『天空の城ラピュタ』より”シータのシチュー”の再現に挑戦します。
ラピュタを見つけるまでドーラ一家と行動を共にするためタイガーモス号に乗ることとなった二人は、それぞれ船での仕事を割り当てられることになります。パズーはじっちゃんことハラ・モトロの助手に、シータはタイガーモス号の台所仕事を任されます。”シータのシチュー”はそんな彼女が初日に作った料理で、パズーを含め腹をすかせた船員たちが次々とおかわりをする様子も描かれています。
使い込まれた寸胴や、シータの調理の手際の良さ、そして船員たちの気持ちの良いほどの食べっぷりが見ている物の食欲を誘います。今回の記事では作中の描写からこの料理がどう言ったものなのかを考察した上で、実際に再現していきたいと思います。
汚すぎるタイガーモス号の台所と高すぎるシータの家事能力!!
それにしてもシータが着任するまでの台所の汚さと言ったら…。これまでどうやって食事を作っていたのだろうかと、不思議になるくらいの散らかりっぷり。というか、汚れた食器だけでなく、生ゴミも放置されており、よくもまあ誰も病気にならずにいたなぁ、と呆れるほど。そもそもこんな台所で作られる食事食べたいと思わないですよね。
パズーとシータが船に乗ることになった時、3兄弟がもう洗濯も掃除も皿洗いもしなくていい、と歓喜していましたが、この有様からして そもそもしてないじゃんっ、めっちゃサボってんじゃんっ、と突っ込みたくなったのは私だけではないはず。
個人的には台所の惨状を見た際にシータの”い〜っ”と言う感じの表情をしてから、細っこい腕で腕まくりするシーンがかなり好きです。そして、あの散らかり放題の台所を短時間である程度とはいえたった一人で片付けてしまい、さらに慣れない飛行船の台所でしかも初めてであろう大所帯の食事を支度してしまうシータの家事スキルの高さといったら…。
しかもタイガーモス号の食事は1日に5回(実際シータがいた期間はそこまで長くはないはずですが)。それぞれの食事で準備に片付けに…、もちろん優しい船員たちの手伝いも多少はあるでしょうが。これを一人で捌くのが尋常ではないことは、想像にたやすいところです。片付けしながらシチューだけでなく粉物まで自分で作っているし、おそらくパン捏ね台の左の棚に並ぶキュウリ、ニンジンのピクルスなどの保存食も合間に作ってしまったのでしょう。
いかにおばあさんの亡くなった後一人で暮らしていたとはいえ、およそ12,3歳の少女とは信じられない手際の良さです。作中では別の文脈で登場しますが、シータの故郷であるゴンドラの谷に伝わる歌”土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう。“にあるように自然の中で日々丁寧な暮らしをしてきたのだろうと言うことが想像できますね。
シータのシチューはどんな料理!!?
では本題です。シータのシチューはどのような料理なのか…。多くの”ジブリ飯”同様、このシチューに関してもどのような料理なのかは作中では具体的な説明はなされていません。ですので、いつものようにどんな料理なのか考える必要があります。
まず確定していることはシチューと書いているように煮込み料理であること。さらに、具材はかなり大きめの塊がゴロゴロと煮込まれています。塊には3種類あって黒、白、オレンジ色のものが見て取れます。そして煮汁はオレンジ色で、シータは蓋を閉じる直前に何かを削り入れました。また、食卓にはシチューだけではなく何種類かの料理が並んでいます。こちらも黒、白、オレンジの食材ですね。
では、まずはわかりやすいところから。寸胴の中の白とオレンジのものに関してはそれぞれジャガイモ、人参のように見えます。そして、シータが仕上げにナイフで削っていたものはチーズですね。丁寧にチーズアイまで書き込まれています。食卓の上のオレンジのものは茹でたニンジンで、黒いものはミートボールかな??
寸胴の中の黒い塊と、食卓の上の白い物が何かを考える前に、とりあえずタイガーモス号の台所事情を見てみることにしましょう。なにせ冷蔵庫もないような時代で、しかも空飛ぶ海賊船ですから、食材にも制限があるはず。実際ドーラが水は大切にしろとコメントしてましたしね。
・意外と種類豊富!!?タイガーモスの台所事情
とは言っても、実際のところタイガーモス号の台所事情はなかなかに恵まれているようで、食材の種類も多岐に渡ります。まず明らかに確認できる食料としては、肉類は宙吊りにされている肉類。大量の腸詰が2種類と、漫画肉のような豚のもも肉(?)と牛か豚かまるまる一匹分のお肉が確認できます。干し肉には見えないけど、台所に入ったシータが寒そうにしていないと言うことは常温で保存されているのかな??まあ、その辺はアニメですからいいっこなしです。
さらに、野菜はカゴの中に大量のじゃがいもに玉ねぎ、そしてかぼちゃが詰め込まれています。やはり長持ちする根菜類がメインのようですね。その他にも上記の通りシータがピクルスを仕込んでいることからニンジンとキュウリもあるのでしょう。傷みやすいので一部はピクルスにして保存が効くようにしたのかな。
それから、さらに描写をよくよく見てみると、捨てられたゴミの中にリンゴの芯、魚の骨、ネギのような葉物やサニーレタスのような物の残骸。あとは生ゴミに埋もれているのはさつまいもと洋梨(??)かな…。所々はみ出している麺のようなものはパスタでしょうかね。そして、缶詰の空き缶や、粉類が入っていたであろう袋のゴミと、ケチャップのボトルのようなもの。
と言うことで、タイガーモス号は思った以上に豊富な食材を揃えていると言うことがわかります。では、これを踏まえてさらに考察を進めていきましょう。
シータのシチューについて最終考察!!
では、寸胴で煮込まれていた黒いものから考えてみましょう。形としては、丸いような、円柱状のような…少なくとも角張ってはいないですね。しかも、よくよく見てみるとただ黒いだけでなく、やや茶色い部分もあります。
ところで、知ってる人も多いかと思いますが、ラピュタの舞台はイギリスのウェールズだと言われています。実際、作中でもドーラの息子たちが好物として”プディング”や”ミンスミートパイ”を挙げる場面も描かれています。そんなイギリスでシチューといえばダンプリングと呼ばれる団子のようなものが入ったもの。イギリスが舞台でそれもシチューといえばこのダンプリングシチューを考えないわけにはいかなかったわけですが、ダンプリングは形自体は近いものの色は白いので、今回の具材ではないかな。
そうすると、やはり素直に考えてお肉でしょうか。卓上のミートボールとも同じような色ですし、煮込みの材料としても申し分ないです。色の違いは焼き色か、あるいは赤身と脂身の違いを表しているのか…。肉の種類としてはやはり煮込み料理なので豚肉よりは牛肉でしょうか。となると、吊り下げられていた一頭肉は牛だったのかな。
汁の色はオレンジ色ですが、トマトでも入っているのでしょうか。保存のこともありますし、上で見た通り生のトマトはなさそうですが、缶詰のゴミがあったことから もしかすると水煮のトマトの缶詰なんかがあるのかな。煮込みにはワインをたくさん使っているのでしょうかね。ドーラがシータに水を節約しろと言っていたように、航海において水は何物にも変え難い貴重な資源ですからね。
最後に、卓上にあった白い物ですが、ぱっと見はジャガイモかなとも思いましたが、全てきっちり同じ形ですし、しかもジャガイモにしては少々薄くて長いように思います。そこで、思い出すのがシータがこねていた生地。初めはパンを作っているのかと思いましたが、よくよく考えてみるとあの食卓に並んでいたタイプのパンを焼くには発酵を取る必要があります。一日5回の食事とすれば、準備に使える時間は長くみても3時間ほどですから、流石に難しいかなと。そうするとシータが作っていたのは発酵を必要としない粉物、しかもイギリスといえば…ショートブレッドなんてどうでしょう。と言うことで卓上の白い食べ物は、ショートブレッドなのではないかなと。ベイクドされたような描き込まれ方でしたしね。
では、以上のことを踏まえて”シータのシチュー”を再現していきましょう。
ジブリ飯”シータのシチュー”の再現レシピ!!
シータのシチュー
Ingredients
シータのシチュー
- 1 kg 牛塊肉
- 1 1/2 個 玉ねぎ
- 10~ 個 じゃがいも(小)
- 4 欠片 ニンニク
- 3~4 本 にんじん
- 250 ml 白ワイン
- 500 ml 赤ワイン
- 適量 水
- 適量 チーズ
- 300 g トマトの水煮
- 塩
- 適量 ブラックペッパー
- 適量 タイム
- 1 枚 ローリエ
ショートブレッド
- 3 カップ 小麦粉
- 225 g バター
- 1/2 カップ 砂糖
- 1 小さじ バニラ
付け合わせ
- 2 本 にんじん
- 150 g ひき肉
- 1/2 個 玉ねぎ
- 2 枚 パン
- 適量 塩胡椒
Instructions
下準備 1 : 食材を切る
- 玉ねぎはみじん切りにする。1 1/2個分はシチューに、1/2個分はミートボールに使用する。ニンニクは皮を剥いて芽を除いておく。
- ジャガイモとニンジンは皮を剥いて大き目の塊に切り分ける。ニンジンの一部は付け合わせ用としてコンフィに使用する。
- 牛肉の塊肉を大きめに切り分け、塩を降って軽く揉み込んでおく。
下準備 2 : ショートブレッドを焼く
- 冷蔵庫から出して少し時間をおいたバターをミキサーにかけてクリーム状にしたら、砂糖を加えてさらに混ぜ合わせる。(もちろん手動でやっても良い)
- 小麦粉を加えて、満遍なく混ざるまで混ぜる。*この際あまり混ぜすぎないように気をつける。
- 生地をパン捏ね台の上に出して綿棒で軽く伸ばしたら、スケッパーなどを使ってまとめて直方体に整形する。
- 直方体にまとめた生地を2cmほどの厚さに切り分け、ベーキングペーパーの上に置いて、フォークなどで穴を開ける。
- オーブンを170ºに温め、30分~1時間焼く。
- 焼き上がったらオーブンから出して冷ましておく。
下準備 3 : ミートボール作り
- ボールに入れたひき肉に塩ひとつまみ加えてからしっかりと粘りが出るまで揉み込む。
- 炒めた玉ねぎのみじん切り、水に浸したパン、小麦粉を加えてさらに揉み込む。
- フライパンに油をたっぷりと注ぎ、丸めたミートボールを入れて揚げていく。揚げたミートボールはキッチンペーパーなどにとって油を切っておく。
本調理
- 鍋に牛脂を炒め溶かし、ニンニクを入れ香りを出す。
- みじん切りにした玉ねぎをじっくりと狐色になるまで炒める。焦げつき始めたら、適宜白ワインを少々入れてデグレッセする。
- 牛肉を加えて焼き色がつくまでしっかりと炒める。焼き色がつきにくい場合はフライパンに移してじっくりと焼いていく。
- 肉に十分に焼き色がつけば白ワイン、赤ワインをひたひたになるまで注ぎ、ローリエを加えて煮込む。赤ワインのみで煮込んでも良い。*赤ワインばかりを大量に使いすぎると味がくどくなる可能性があるので、ここでは白ワインも使っています。
- 中火でワインが1/3量程度になるまでじっくりと煮込んだら、トマトの水煮を加えてさらに煮込む。この時、タイムも加える。
- 水をひたひたになるまで注いだのち、ジャガイモとニンジンを加えて火が通るまでさらに煮込む。
- ジャガイモとニンジンが箸が通るくらいに煮こめれば、チーズを削り入れる。最後に塩胡椒で調味すれば完成。
- ミートボールとニンジンのコンフィは同じお皿に、焼き上がって冷ましたショートブレッドは別のお皿に盛り付ける。
- シチューを器に盛れば出来上がり!!
ジブリ飯”シータのシチュー”を作った感想。
さて、完成しました。全て盛り付けるとこんな感じになります。我ながらなかなか良い感じです。
そして、肝心のシチューのお味はというと、正直感動するほどお肉が柔らかくなってとんでもなくおいしく仕上がりました。ワインたっぷりで煮込んだおかげでコクも香りも非常に豊かです。これはドーラ一家の男どもがこぞっておかわりするのもわかるよ。
付け合わせで作ったショートブレッドもなんとなく劇中の描写の雰囲気を再現できているのではないでしょうか。正直なところあの料理だけは自信がないのですが…でもなかなかいい線はいっているのではないかな。
と言うわけで、今回の再現料理は『天空の城ラピュタ』より”シータのシチュー”でした!!