ゴールデンカムイ

『ゴールデンカムイ』のユクオハウを再現する。

『ゴールデンカムイ』の”ユオハウ”とは

“ユオハウ”とは野田マサルによる漫画作品『ゴールデンカムイ』に登場する料理の一つ。

『ゴールデンカムイ』は日露戦争後の北海道を舞台として、日露戦争の帰還兵である英雄「不死身の杉本」杉元佐一とアイヌの少女アシㇼパとが、軍部の将校や囚人の親玉との争奪戦を繰り広げながら、網走監獄に収監されていた24人の囚人の体に彫られた「刺青皮」を集め、失われた”アイヌの金塊”を探し求める物語。

作品の特徴の一つとして、アイヌ文化、料理を非常に丁寧に描いているという点が挙げられる。作中には多くのアイヌの狩猟料理が描かれており、その野生的で魅力的な料理の数々からバトル漫画ながら異色のグルメ要素の強い作品となっている。

オハウは『ゴールデンカムイ』4巻 第30話「言い伝え」に登場する料理である。

“ユオハウ”はどういう料理か

オハウとはアイヌ料理の一つで、”ユ(=鹿肉)”の”オハウ(=汁物)”ということでアイヌ語で”鹿肉汁”を意味する。オハウはアイヌの食生活の中心的な伝統料理であり、様々な具材を使って作られる。特に狩猟によってとられた獣肉を行者ニンニクなどの野草とともに鉄鍋で煮込むことで作られる。脂と少量の塩だけで味付けされる。

オハウは特に”ユ(=鹿肉)”を主材料としたもので、作中ではプクサ(行者ニンニク)およびプクサキナ(ニリンソウ)を入れて調理されている。

『ゴールデンカムイ』の”ユオハウ”を北欧圏で再現する。

オハウの材料集め

『ゴールデンカムイ』という作品の舞台は北海道である。さらに登場する料理もアイヌ料理や狩猟料理ということから、その食材も当然ながら北海道で獲れる(そもそも素人では手に入れられないものも多い)ものが多く使われている。そのため北海道から離れた場所では料理を再現するのもなかなか困難となる。

さて、筆者は北海道からはるか離れた北欧の地に住んでいる。そうなると全くの問題外だと思われるかもしれない。しかし、筆者の住むスウェーデン北部は北海道と似た気候をもつ。そのため意外な事に、スウェーデンでも山菜が手に入るのである。

スウェーデンの行者ニンニクがこちら。

スウェーデン名”ramslök”という野菜で、学名はAllium ursinum。行者ニンニクの学名はAllium victorialis subspなので、厳密には同じ品種ではないのだが、味や香りは限りなく近い。

一方、主材料となる鹿肉に関してだが、スウェーデンではジビエ食は一般的であり、様々な種類の獣肉が食べられている。ただし、北部に位置する筆者の街では鹿肉が手に入りづらい。そのため、代わりに同じくシカ科のトナカイの肉を使用する。

こちらがトナカイ肉(Ren)。スーパーで購入できる骨付きのスープ用ぶつ切り。

牛肉やラム肉に比べると暗みがかった色合いかな。淡白ながら野生味のある味わいが特徴で臭みやクセはそれほど強くない印象。

最後にニリンソウだが、残念ながら我が家ではニリンソウは枯れてしまったため使用できず。探せばその辺に生えているのだろうが、素人目で採取してトリカブトや同じく毒草であるイチリンソウを食べてしまうのも怖いので、今回はニリンソウの使用は断念。

作中では肉の旨みを引き出す野草として描かれているだけに、是非とも使ってみたかったのだが、それは また次の機会に持ち越すこととして、今回は代わりにプランターで育てている三つ葉と春菊を使う事にしよう。

オハウを作る

さて、結論から言うと、ユオハウを作る工程はそれほど難しいものではない。もともとアイヌ料理は自然の恵みをそのままに、それほど手を加えることなく美味しくいただくといった種類の料理なので、調理に際して複雑な手順なども特にない。”狩る”、”捌く”の段階では多くの”アイヌの知恵”が詰まっているのだろうが…。

オハウは鉄鍋を使うと言うことで、我が家でも鉄鍋を使用。日本にいた頃から愛用していた南部鉄器の鉄鍋。学生の自分になけなしの金を叩いて買った物で、当時はまさか海外で使う事になるなんて思ってもみなかったのであるが、いまでも愛着を持って大切に使っている。

南部鉄器の鉄鍋

今回使ったトナカイの肉は、一応スープ用として売られているもので、骨付きのままぶつ切りにされたもの。骨付きなのでじっくりと煮込めば良い出汁が出る。念の為、小一時間ほど水に浸けておいて血抜き、臭み抜きを行ってから使う。

トナカイ肉の臭み抜き

オハウの調理工程は、具材をシンプルに水で煮込むだけ。伝統的な方法にこだわらなければ、葱や生姜、酒などを加えて臭みをとるのもいいかもしれない。

ただし、具材に使う行者ニンニクもネギ属で香りも風味も強く、十分にジビエの臭みを消してくれるので、その辺りはお好みで。

トナカイ肉を煮込む

トナカイ肉は結構灰汁が多く出る。これは生肉作業時の処理の問題もあるのかなと訝しんでいるのだが、個人的にはスウェーデンの肉類は日本のものよりもだいぶ多くのアクが出るように感じる。

スウェーデンのトナカイ肉はアクが多い

行者ニンニクなど野菜類は茹ですぎても美味しくないので、食べる直前に入れて食感が残っているうちに仕上げると良い。それに茹ですぎると色も変わってしまうので注意が必要。

行者ニンニクを加える

ということで、こちらが完成写真。

『ゴールデンカムイ』のユオハウ

『ゴールデンカムイ』の”ユオハウ”を再現した感想

オハウというのは非常にシンプルな調理工程の料理で、今回の”ユオハウ”も言ってしまえば水でトナカイ肉を煮込んだだけのものである。丁寧に下処理はしたものの、そもそもジビエ肉はクセが強いので、例えばハーブを入れたり、酒を加えたりという臭みをとる特別な工程なしに本当に大丈夫なのだろうか、水で茹でただけでは臭みが強いのではないだろうか、と不安もあった(実際トナカイ肉だけを煮込んでいる間はやや臭みが強かった)。

しかし、実際に食べてみるとそんな不安はどこ吹く風。これがまた非常に美味なのである。これも行者ニンニクの力なのか、ネギ科で香りも強く味わいの風味も強いのでトナカイ肉の旨みを良い感じに引き立ててくれた。

オハウをいただく

行者ニンニクだけでもこれほどに美味いのであれば、ここに”肉の旨みを引き立てる野草”であるニリンソウがあれば、さらにどれほど美味しくなったのだろうか。是非次こそはニリンソウを手に入れてから試してみたいものだ…などと脳内で妄想しつつ食べていると、気がつけば箸は鍋底をつついていた。

ちなみに今回は試さなかったのだが、作中でアシㇼパさんがオソマ(ここではお味噌のこと)を入れたがっていたので、そういう食べ方もありなのかもしれない。生の行者ニンニクと味噌の相性は言わずもがな。そして牡丹鍋はじめ、ジビエは味噌と合わせることも多い。個人的には火を通した行者ニンニクはさっぱりといきたい気もするが、機会があれば味噌鍋も試してみるのも良いかもしれない。

オソマ入れなきゃいいけど……

『ゴールデンカムイ』の”ユオハウ”の再現レシピ

それでは”ユオハウ”の詳しい再現レシピをまとめておこう。

*詳細レシピは”自由課金”としておりますので無料で見ることができますが、レシピが気に入ればお好きな値段をお支払いいただければ嬉しく思います。

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