・『紅の豚』の”ピッコロ社のまかないスパゲッティ”とは
“ピッコロ社のまかないスパゲッティ”とはジブリ映画『紅の豚』に登場する「ジブリ飯」の一つです。
『紅の豚』とは宮崎駿の「宮崎駿の雑想ノート」の「飛行艇時代」を原作としたスタジオジブリの長編映画で、世界恐慌時代のイタリア、アドリア海を舞台とした自分自身に豚人間になる魔法をかけた元軍人の飛空挺乗りポルコ・ロッソの物語。
今回は『紅の豚』よりポルコがサボイアの修理のために訪れたミラノのピッコロ社で振る舞われた”ピッコロ社のまかないパスタ”を再現してみました。出稼ぎの男衆の代わりに集まったピッコロ社の女性陣の活気が非常に印象的なシーンですね。料理もシンプルにイタリアらしくトマトのパスタ料理です。
ピッコロ社を訪れた際、ポルコは飛空挺設計技師の少女フィオ・ピッコロに初めて出会います。フィオはアメリカでの修行経験もあり、飛空挺設計技師としての腕前もピカイチ。当初サボイアの改修をフィオに任せることに難色を示していたポルコを納得させるに足るほどの技量と、反論の余地を与えない押しの強さや、無理やり同行しようとする職人気質を持ち合わせたヒロインです。ポルコに黙ってサボイアに乗り込むスペースを作ってしまう行動力や、アジトで待ち伏せしていた空賊たちを前にして啖呵を切る胆力と芯の強さはまさしく“ジブリヒロイン”といった少女ですね。
サボイアの改修をめぐってのポルコとの“いいパイロットの第1条件を教えて 経験?“→“いや インスピレーションだな”→“よかった 経験だって言われなくて”のやりとりは個人的に大好きなシーンです。
・まさか赤ワイン?フィオたちが飲んでいるものは??
さて、では恒例の「ジブリ飯」考察に入りましょう。まず、料理の前に“飲み物”について考えてみましょう。テーブルに並べられたボトル。グラスに注がれた液体の色は暗めの赤色でした。当然水ではありませんし、ジュースである可能性も低いかなと。赤ワインでしょう。
17歳のフィオや、彼女よりも年若そうな少女たち(ソフィア、ラウラ、コンスタンス、バレンティーナ)が飲んでいるのは日本人的にはやや違和感はありますが、イタリアではワインは嗜好品というよりはむしろ、生活必需品の一つで子供の頃から飲まれているものですから。
・マンマの味?パスタのソースは…。
“食べ物”についてですが、作中の描写からしてパスタであることは確定です。パスタの種類としては、太さや長さ、形状などからおそらく円形断面のロングパスタなのでスパゲッティかな。
ソースに関しては、見た目からトマトベースのソースであることは明白ですが、一口にトマトベースのソースと言っても、イタリア全土で食べられる最もシンプルで古典的なポモドーロから、カンパーニャ州のプッタネスカやヴォンゴレロッソ、ラツィオ州のアマトリチャーナやアラビアータ、etc…。
イタリアには一括りにするのは難しいほどに各地域で多様性のある郷土料理が存在し、もちろんこのピッコロ社があるミラノにもロンバルディア州の郷土料理が存在します(ミラノ風カツレツやミラノ風ドリアなど)が、トマトベースのパスタ料理はあまり聞き馴染みがありません。なので郷土料理の線は薄そう。では、何パスタなのか…。
今回の場合、考察材料は他にもあります。まずは大人数で一斉に作り一斉に食べる”まかない”であること。そしてポルコとおやっさん以外の女性陣のパスタもどう見ても”大盛り”なこと。きわめつけはピッコロ社が”倒産寸前”でかつ出資者のポルコのお財布事情も芳しくないこと。
これらのことから、比較的安価でかつ調理も簡単に行えるものだと考えられます。パスタが大盛りなのは具材が少ない分をかさ上げして、経済的に済ませているのではないかと推測できます。結局のところ最もシンプルなトマトソース。イタリアで最定番ともいえる“マンマの味”スパゲッティ・アル・ポモドーロ(Spaghetti al pomodoro)であるかと思います。
では、ジブリ映画『紅の豚』より”ピッコロ社のまかないパスタ”の再現レシピです。
・”ピッコロ社のまかないパスタ”再現レシピ
ピッコロ社のまかないスパゲティ・アラ・ポモドーロ
Ingredients
- 100 g スパゲッティ(1.7mm)
- 1/2 缶 ホールトマト
- 1-2 片 濃口醤油
- 適量 パルメザンチーズ
- 適量 オリーブオイル たっぷりめ(大さじ2~3程度)
- 適量 塩
Instructions
- ニンニクは粗めのみじん切りにして、たっぷりのオリーブオイルでじっくり炒める。焦げないように気をつけながら、しっかりと香りをオイルに移していく。
- ホールトマトを粗く潰して加え、軽く塩を振り旨味を出しながら炒めていく。ざっくりと炒まれば、トマト缶の残りのトマトジュースを加えて、足りないようならさらに適宜水を足して煮込んでいく。*タイムやオレガノなど好みのハーブを加えと良い。
- スパゲッティを茹でていく。別にアルデンテにする必要はないが、ソースと和える際にも多少 火が入るので茹であがりは好みの硬さの一歩手前くらいにしておく。ゆで汁は取っておく。
- 茹で上がったスパゲティにパルメザンチーズを和えておく。*ソースと和える前にチーズと和えるのがイタリア流らしい。ソースがパスタに絡みやすくなる。
- トマトソースの鍋にパスタの茹で汁を大さじ2ほど加え、強火にかけて一気に乳化させる。ソースがしっかりと乳化したら、スパゲティを加えて手早くしっかりと和えれば完成。
Notes