・ジコ坊の特製鉄釜粥!そなたの米だ、もっと食え!!
今回再現した「ジブリ飯」は映画『もののけ姫』から“ジコ坊の特製鉄釜粥”です。この料理は、劇中の場面としても印象的なであることに加え、料理シーンがしっかり描かれていること、そして何よりジコ坊の見事な食べっぷりから、意外と人気の高い「ジブリ飯」の一つとなっています。
里を離れたアシタカがはじめて(?)たどり着いた人里にて、“石火矢”や”シシガミ”といった物語の核心に迫る事柄を知る最重要人物の一人である“ジコ坊”と出会い、その晩にその後の展開を決める非常に重要な話をします。その際にジコ坊が作ったのがこの料理になります。「ジブリ飯」の中でも比較的シンプルな部類の料理ですが、実は作る上でいくつか食材について考察する必要があります。
・まずは再現画像から!『もののけ姫』の”ジコ坊の鉄釜粥”!!
考察云々の前に、まずは再現した画像がこちらになります。
残念ながら、ジコ坊が持っていたような足つきの鉄釜はなかったので、鉄鍋を使用しましたが、なかなか良い雰囲気に仕上がっているのではないかと…。
では、考察、及び再現レシピに進んでいきましょう。
ちなみに、このシーンでのジコ坊の“そなたの米だ。どんどん食え”は子供心にかなり印象的なセリフでした。
・『もののけ姫』の夕食シーンは『シュナの旅』のセルフオマージュ?
さて、ジブリ飯の考察に入る前に少しだけ…。前々から気になっていたことを
上述の通り、今回の食事シーンは、『もののけ姫』の中でもかなり重要な場面になります。アシタカは祟り神に打ち込まれた石火矢の弾のことをジコ坊に尋ね、ここでジコ坊の答えからこの後のアシタカの進む道を決めることとなります。このシーンが『シュナの旅』の1シーン(謎の老人にナンを振る舞い”神人の国”の存在を知る)と重なったのは僕だけでしょうか。。
『シュナの旅』でも、主人公のシュナが食べ物を老人に与える代わりに「神人の土地」についての情報をもらいます。
『もののけ姫』のアシタカ同様、シュナも進む道を示されるわけです。なので、この老人との食事のシーンは主人公シュナにとって非常に重要なシーンとなっています。アシタカとジコ坊の会話は、『シュナの旅』のこの場面のセルフオマージュなのではないかなぁ…と。
『シュナの旅』は映画『ゲド戦記』の原作の一つとしても知られていますが、1983年に宮崎駿氏が描いたファンタジー絵本(?)です。
・”ジコ坊の鉄鍋粥”はどんな粥?ジコ坊の”とっておき”はお味噌??
では、いよいよ本題です。本記事では すでに”特製鉄釜粥”と書いてしまっていますが、実際は作中ではこの料理がどんなものなのかは明言されていませんので、今回は まずはそこから始める必要があります。そもそも食材も限られ、十分な調理設備もない状況では、作れる料理は限られてきます。
” そなたの米だ。どんどん食え “というジコ坊の発言と調理描写から、米を鉄釜で煮込んだ料理であるのは確実なので、ここは素直に”お粥”と考えて間違いないでしょう。
さて、問題はここから、議論になるのはこの”鉄鍋粥”の材料です。
粥に入れる穀類は、ジコ坊の発言から直前にアシタカが購入した米で問題ありませんが…。米が煮上がったあたりで、ジコ坊が荷物の中からとっておきとばかりに竹の皮(?)に包まれたものを取り出します。このジコ坊の”とっておき”はなんでしょうか??
もったいぶるのもなんなので早速結論を書くと、色、形状など諸々の描写から、おそらく”味噌”だと思われます。味噌なら保存もききますし、旅荷に入れてあっても不思議はありませんね。
調理の最後の段階に入れていることは、味付けをするための調味料的なものであると考えられますので矛盾はありません。
というわけで、ジコ坊の”とっておき”は”お味噌”ということで決定!!
では、材料も判明したし、いざ調理開始!!
…と、はいかないのです。実はもう一つ考えなくてはいけない事が残っています。そうです。それは粥の中に入っている”野菜”らしきものです。
・粥の中の”野菜らしきもの”の正体は野草!!?
さて、これが一番の問題です。一体何の野菜なのでしょうか。結論から言うと、僕の予想ではこれは“野草”だと思っています。
まず、アシタカは蚤の市(というより、里を出てから)で米以外のものを何も購入していません。これは米を買う際の砂金が波乱を呼んだことからも自明ですね。米を買った後は、他のものを買うこともなく市場を去り悪漢に襲われていますし、仮に米より前に何か別のものを買っていたら、その際に既に砂金云々の一悶着があったはずです。
ジコ坊についても、蚤の市で野菜類を購入しているとは考えにくいです。アシタカに米をたかっていますし、そもそも旅をする人間が、日持ちもせず嵩張る野菜類を持ち運んでいるというのは現実的ではない気がします。
そんなわけで、”野草”だろうと考えたわけですが、実は意外と日本には“食べられる野草”というのは多く存在します。この蚤の市はアシタカの旅の最序盤ですので、東北地方(アシタカは蝦夷)周辺でしょう。東北地方に生息している食べられる野草といえば”よもぎ”や”菊”ですね。
よもぎはアイヌの人々の民間治療法として使われていましたし、菊に関しては現在も”食用菊”は東北地方の特産です。もちろんどちらも全国的に生息していますが…。
初めは”よもぎ”を使おうと思っていたのですが、生のよもぎがなかなか手に入らないので、今回は近くのデパ地下で購入できる”菊葉”を使用してみました。
食用菊・葉 posted by (C)qooh
ともかく、よもぎや菊には様々な薬効もある上、独特の苦味が味噌とも相性が良いです。この辺りからも、以外と妥当な推測なんじゃないかと…。もしかするとジコ坊が一度味を見てから味噌を加えたのは、この苦味を抑えるためだったのかも…なんて。
では『もののけ姫』より”ジコ坊の特製鉄鍋粥”の再現レシピです。
“ジコ坊の特製鉄鍋粥”の再現レシピ
ジコ坊の鉄鍋粥
Equipment
- 鉄鍋
Ingredients
- 1 合 米
- 4-5 枚 菊葉
- 適量 味噌
- 1000 ml 水 七分粥
Instructions
- 菊葉は千切りにしておく。
- 米はザルに入れて流水でさっと揉み洗いしておく。とぎ汁が澄むまで何度か水を変えつつ洗えば水気を切って鉄鍋に移しておく。*ジコ坊は多分 洗っていないでしょうね。
- 鍋に水をそそぎ入れたら中火にかける。1度煮立ったら、米が底に焦げ付かないように優しく撹拌し、火を弱める。
- 弱火にしたら蓋をして炊いていく。蓋は完全に閉めると溢れてしまうので、少し隙間を作っておく。
- 米が好みの硬さになれば、"ジコ坊のとっておき"ことお味噌を加え、溶かすようにしてさっくりと混ぜる。味噌の量はお好みで。
- 最後に菊葉を散らせば完成。
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鉄鍋は茶釜の類ではないかなと思います
あ、たしかに言われてみればそんな感じですね。ちょっとスッキリしました笑
当時の味噌って米よりはるかに希少で、当然ながら数段値も張るので、そんな味噌を提供したうえで調理までしたジコ坊の方がアシタカより多く食べるのもそこまで理不尽ではないかなと思います。(もっとも、ここで表したかったのは二人の性格の違いだと思いますが)
おっしゃる通りです。僕もそう思います。
両者の性格の対比が本当にうまくなされていました。